Japanische Klassiker mit Furigana
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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme
お前には三郎の声だけでも聞かれるというのは、まだしも幸というものかも知れないよ」
何にせよ、いくら憾んでみても見えないものは是非もありません。それでいながら、閣下がいつもそこにいるせいもあって、あの火の気もなく日あたりの悪い埃っぽいむかしの子供部屋が、自然と夫婦の足だまりになって今までの居間を忘れたように昼も夜もそこに入りびたるような始末になりました。わたくしにも、眼にこそ見えませんが三郎がそこにいる雰囲気が感じられるような気がするからでした。順々にまだ若い息子たちを奪われてしまって孫ひとりないわたくしは云ってはならないとは知りながら、或る晩も思い余ってつい閣下に言ってしまったものでした。――
「閣下は他人の子に命令を出して死地に追いやっただけでは足りなくて画家になりたがっていた太郎やお医者を志望の次郎を無理に軍人に仕立てて若死させておしまいなすったのですね。――あなたおひとりの子供ではございませんでしたのに」
「またはじまったね。いつも云うとおり、わしは乃木閣下を気取るわけではないが、わしにとっては他人の子ばかりではなく、わが子もふたりまで戦場で死なしていることが、世間へのせめてもの申しわけになっているつもりなのだ。