Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
貴公、今日はこれだけで、次回を期すということにしようじゃないか。
よかろう。だがな、二人でもう五合ほしいじゃないか――。いや待て、腹の虫を抑えるのはここだ。
惜しい最後の一盃を呑み干し役場を出た。友は役場の前を出るとすぐ左手へ曲がって別れ、近くのわが家の方へ帰って行った。私は、野道を東に向かい、わが村の方へ急いだのである。
初夏の微風が、ほんのりとした頬を爽やかに吹いて快い。六月はじめの田圃は麦の波が薄く黄褐色に彩られて、そよそよとしているけれど、桑は濃緑色に茂り合い、畑から溢れんばかり盛り上がっている。なんと豊満な野面の風景であろうと思いながら、感服して歩いた。
役場のある東箱田と、私の村との、ほぼ中間に殿田用水の石橋がある。石橋の手前の方二十間ばかりは、路の両側に桑畑が森の如く茂り合っている。路の幅は、一間半あるかないか。
永き夏の陽も、西に没して空の茜色も消え去り、行く手のほの暗い東天低く、宵の明星がきらめき光っている。鬱蒼と茂る桑畑の路に歩を進めると、ここはもう淡暗だ。
理屈があったわけではない。予感があったわけでもない。桑畑と桑畑との間の、うすくらがり路へ一歩入ると、私の背中は俄に、ぞくぞくした。