Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme

Aozora Bunko

この食詰横町に住んでいる人物は、すべてカンニング崩れなんだ。社会生活にカンニングを用いれば、誰でもこの横町へ這い込まにゃならんよ。

こんな冗談を言い合って、笑ったものだ。

さて、私の場合であるが、私は世の中へ出てから、別段カンニングをやった覚えはなし、人の物をちょろまかした記憶もない。

だのに、食い詰めて、せっぱ詰まった。

会社をやめる時、退職金を一万二千六百円貰った。大正の末年の、デフレの大不景気時代であったから、当時の一万二千六百円と言えば素晴らしい。そのころ、とろとろと唇の縁がねばるような白鷹四斗樽が一本、金八十円前後で、酒屋の番頭が首がもげはせぬかと心配になるほどぺこぺこ頭を下げて、勝手元まで運び込んだものである。

この頃のように闇値横行のとき、一升三百円の酒を買えば、一万二千円所持していたところで、四斗樽一本でおしまいだ。しかるに、一升二円の酒を、一万二千六百円買えば、何升手に入りますか、と試問されても、頭がこんがらかり舌が吊ってしまって即座には返答ができないであろう。その退職金を懐中にし、途中で軽く一盃召し上がって、ひとまずいそいそとわが家へ帰った。