Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

たねこのゆううつ

たね子の憂鬱

芥川 竜之介

Lesen Sie たね子の憂鬱 (たねこのゆううつ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.606 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女も勿論熱心だった。しかし最後にオレンジだのバナナだのの出て来た時にはおのずからこう云う果物の値段を考えない訣には行かなかった。

彼等はこのレストオランをあとに銀座の裏を歩いて行った。夫はやっと義務を果した満足を感じているらしかった。が、たね子は心の中に何度もフォオクの使いかただのカッフェの飲みかただのと思い返していた。のみならず万一間違った時には――と云う病的な不安も感じていた。銀座の裏は静かだった。アスファルトの上へ落ちた日あしもやはり静かに春めかしかった。しかしたね子は夫の言葉に好い加減な返事を与えながら、遅れ勝ちに足を運んでいた。……

帝国ホテルの中へはいるのは勿論彼女には始めてだった。たね子は紋服を着た夫を前に狭い階段を登りながら、大谷石や煉瓦を用いた内部に何か無気味に近いものを感じた。のみならず壁を伝わって走る、大きい一匹の鼠さえ感じた。感じた?――それは実際「感じた」だった。彼女は夫の袂を引き、「あら、あなた、鼠が」と言った。が、夫はふり返ると、ちょっと当惑らしい表情を浮べ、「どこに?……気のせいだよ」と答えたばかりだった。たね子は夫にこう言われない前にも彼女の錯覚に気づいていた。