Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
Lesen Sie ゆだん大敵 (ゆだんたいてき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.664 Zeichen · 41 Bildschirme
十
「いけません、これはお断り申します。人に迷惑を及ぼす私用の文書もございますから」
久之助は黙って手を放した。
十
手文庫を放して立つと、手をあげて長押の上をさっと撫で、その手を賢七の前へさし出した。掌は塵で黒くなっていた。
「このありさまを見るがよい」
久之助は部屋をぐるっと見まわした。
「……自分の部屋ではなく、他人の部屋だと思ってよく見ろ、いつなんどきでも身命を奉るという、その『いつ』が待った無しで、あるとき即座に死んだとする、事情に依って検視役は手文庫なども容赦はしない、戸納の奥、部屋の隅々をかき捜されれば、少しの誇張もなくこの部屋はこのありさまになる、……貴公これでいさぎよく死ねると思うか、これで死んで恥かしくはないか」
賢七は五躰が萎えでもしたようにそこへ坐り、両手で膝を掴みながら低く頭を垂れた。
「身の恥を云えば」
久之助は心痛そうな声で続けた。
「……今から数年まえに、拙者もこれと殆んど同じ経験をしている。いつでも死ねると覚悟はきめながら、実際にその覚悟を活かしていなかった。その事実をさる御仁から指摘されたとき、どんなに拙者がまいったかおわかりだろう、……学問も武芸も大切だ、しかし一死奉公の根本がぐらぐらでは、たとえ大学者となり刀法の名人上手となってもまことの武士とはいえない。