Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
」
――恋物語だったのですか――なんとねえ!」と私は少からず面喰った。
――神様の啓示です。聞いて下さい。……もう殆ど三月も前のことですが、故国から訪ねて来た友達を案内して、瀬戸内海の方へ見物旅行に出かけるつもりだったので、M百貨店へ行って買物をして序に双眼鏡を一つ買いました。そして、その買いたての双眼鏡をもって、私はM百貨店の屋上から初覗きに東京中の景色を眺めまわしてみました。晴れた日の午さがりで、大きな貨物船の沢山浮かんだ碧い品川の海や、数え切れない程の煙突や、とたん屋根や、洗濯物が一っぱいかかっている物干しや、いろんなものが見えました。上野の山の青空に風船が浮かんで、その下に散りかけた桜の花が煤けた古綿のように汚ならしく見えました。それから、その次にレンズを動かしたはずみに、大ぜいの市井の人々の姿が映りました、その中に、ふと私は非常に綺麗な娘さんの顔を見つけました。純然たる日本の髪を結った少女で、東洋的美しさの典型とも云いたい、仏さまのような優しい清らかな顔でした。私は一眼見てはげしく心を打たれてしまいました。たとえようもない無二無三な恋慕の情がするどく胸をかきむしりました。