Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
汽車に乗ってからは、父は窓の外を走っている町端れの景色の方へ向いて、「ヤングマンスファンシイ」の口笛なんかを吹き鳴らしていた。そして私に対しては一層冷淡な態度をとった。
「ね、港へ船見に行くの?……」と私は不安な気持できいた。
「うん。船に乗るかも知れない……」
父はそう返事しながら、胸のかくしから疎い紫の格子のある派手なハンカチと一緒に大きな鼈甲縁の眼鏡をとり出すと、それをそのハンカチでちよっと拭いて悪くもない眼へ掛けた。コティの香水の匂がハンカチからむせ返る程ふりまかれた。
「港の眺め程ロマンチックなものはないと思うよ。」と父は云った。
「お父さん。どうして、そんな眼鏡かけんの?」私は父の不似合な顔の様子を気にかけて、そうたずねた。
すると父はひどく慍った。
「お父さんだって? 莫迦だな、君は!……僕がどうして君のお父さんなもんか! もしも、も一度そんな下らない間違いをすると、なぐるぞ!」
「………………」
私はそこで、不意に、本当にこの支那人のような顔をした男は、父ではないような気がしだした。
私は眼をさました時に、大きな見まちがいをしてしまったのかも知れないと思い返してみた。