Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
私は父と子との関係について――父なぞと云う存在が私にとって果してどれ程密接な関係に置かれているものか――しかも、私の父は、私とはたった十年しかちがいはないのだが――それらがみんな今更大きな誤りだったように思われて……私はだんだん、強か酔っぱらってしまった時のように、信じ得べき存在はただ自分一個だけになって途方に暮れた。
「君、そんな蒼い顔しちゃいやだよ。……泣きっ面なんかしてると汽車の中へ置いてきぼりにしちゃうから!」父はまたずけずけとそう云ったが、それでも直ぐ機嫌をとるようにつけ加えた。
「嘘だよ。そんな悪いことをするもんか。それどころか。僕は君に送って来てもらって本当に喜んでいるんだよ。」
父はそして声をたてて笑った。
私は、今日こんな風にうっかりと出かけて来たことを悔みながら窓外の爽かな田園の風光が、愁しい泪の中に消えて行くのを見守っているより仕方もなかった。
港の停車場に着くと、父は車夫を呼んでチェッキで大きな赤革のスートケースを二つも受け取らせた。そのスートケースの一つと共に車に乗って波止場へ向う道々、私は何時の間に父がこんな大きな荷物を持ち出したものかと思い迷った。