Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
彼はもとから、この界隈何百軒の人々が、鱈なら鱈と、同じ夕食に同じおかずを食べるという現象を、面白く思っていなかった。一緒に集って食べるのならともかく、各自マッチ箱のような家に立てこもって、隣家や向いと同じおかずを、ほそぼそと突っつく。――今の気分はことにそうであった。あのどろどろのシチウを見た夜以来、彼の食慾は急速に減退していた。何を見ても食慾が起らないし、何を食べても味がない。食物を想像するだけで、咽喉がつまるような気がした。鱈。スケソウ鱈のあの猫の舌みたいなざらざらした感触をかんがえると、彼は食道の内側に毛の生えたものを無理矢理に押しこまれるような気がした。そのスケソウ鱈の冷凍がとけて、庖丁が通るようになり、たくさんの切り身となるのを数百数千の人が待っている。……
(さて、どうやってあの靴を取戻したらいいだろう。まさかおれが忍びこんで、靴をくわえてくる訳にも行くまいし――)
女の子の甲高い叫び声をききながら、彼はぼんやり考えた。そう考えてみただけで、実際取戻すということには、ほとんど現実感がなかった。皮膚のあちこちが、しきりに痒かった。
「やはり黄色いよ。