Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

メスを握る細い指が微妙に動くのを彼は見ていた。中山がそばから訊ねた。

「手術時間はどの位かかるのです?」

「三十分位で済みますよ」

「頭蓋骨の穴はそのままにしておくのですか」

「いえ。やっぱりふさぎます。ドリルで骨を削るでしょう。その破片や粉末が血と一緒になって、こねられて、粘土みたいになっているんです。そいつを丸めて、穴に押しこんでおくと、ひとりでにふさがっていますよ」

医師はケースを閉じて、戸棚にもどした。人間の、考えたり感じたりする実体が、それらの部分を金属のメスで手探りされたり切り離されたりする時、その実体そのものは何を考えたり感じたりしているのだろう。医師の話では、その手術は局部麻酔で、患者は手術中に医師と話も出来るということであった。その局部麻酔というのも、頭蓋の外側だけに必要なので、頭蓋骨や脳には不必要だというのであった。考えたり感じたりする脳が、感覚を欠除しているということが、彼には妙に不気味に感じられた。この感じは、一週間ほど前に彼が読んだ、動物試験で心臓を切り取って、その心臓が食塩水かなにかの中で数時間生きていたという実験の記事につながっていた。