Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
つまずいたり、他のことを考えたりすると、番号を忘れてしまうおそれがあったからだ。Q二〇三九……Q二〇三九……
家に入り、鍵をかけ、画室に入る。画用紙にその番号を書きつける。やっと安心して、椅子に浅く腰をかける。肱を膝の上に立て、頬杖をつく。五分間、その姿勢のまま、じっと動かなかった。やがて顔を頬杖から外し、手を伸ばして電話帳を取った。膝の上でぺらぺらめくって、自動車会社の番号を捜した。やがて捜し当てた。彼は呟いた。
「せですむことを!」
彼は立ち上り、部屋の隅の電話のダイヤルを廻した。廻す途中で少しためらったが、押し切るようにして最後まで廻した。相手が出て来た。
「もしもし。お宅にQ二〇三九という車がありますね」
「はあ。ちょっと待って下さい」
受話器を置く音がした。彼は体を凝らして立っていた。子供の頃、彼の家には烈しい気性の祖母がいた。何か悪いこと、余計なこと、いたずらに類することをすると、たいへんな勢いで怒り、火箸や長煙管で彼を打擲し、折檻した。
「せですむことを!」
「せですむことをして」
しないですむことをする、という意味である。その言葉は彼の体に深くしみ入って、時々舌にのぼって来る。