Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
たかが曲れとか曲らないということではないか。歩かされたとしても、三十メートルに過ぎないじゃないか。それをこんなに電話して文句を言えば、当の運転手も成績が下るだろうし、こちらも巻き込まれることで面倒がかかるかも知れぬ。誰も得をしない。つまりこんなのが、せですむことじゃないだろうか。そう考えたとたん、電話の向うに相手が出て来た。
「はい。確かにそれは、うちの車です」
「そうですか。その車が二十分ぐらい前、こんなことをした」
彼はさっきの事件を順序立てて、順序立てたつもりで説明した。向うは事務的な声で、
「はい」
「はい」
と返事をした。くわしく話す予定であったが、説明は一分足らずで済んだ。詳述しようにも、それほどの材料がない。最後に言った。
「途中で降ろすなんて、乗車拒否より悪質だと僕は思うんですがね」
「判りました。当人は明朝十一時に戻って来る筈ですから、事情をよく聞きまして――」
彼は電話を切った。折角の酔いがうまく発散せず、深く澱んでいるのが判る。じっと濃厚に澱んで動かない。もう一杯飲めば、そいつを引っぱり出せるかも知れないのだが、見渡しても酒は一滴もここにはない。