Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

するとまた古畑老人が、そっぽ向いたまま、かすれたような声を出した。

「さ。誰かノコ持ってきなよ。早くしないと、今夜もまた、停電さまだぜえ」

結局その樹が根元から切り倒されるまで、私は台所の土間で見物していたし、古畑もその位置から離れなかった。ただし私の方を再びは見なかったようである。手首がない方の腕をふところ手にして、したがってその側の肩をすこしそびやかして、最後まで口うるさく、いろいろと指図をしていた。私も何か言っていいことがあるような気がしたが、よく考えると何もなかったし、向うにしてみても、私に言っていいことを、動作や懸け声でごまかしているようにも見えた。そんな具合に進行して、つまり無花果は完全に切り倒された。切り倒してしまうと、古畑もふくめて、皆は安心したようにしゃべり合いながら、向うの低地に飛び降りて、それぞれの家に戻って行った。無花果の樹は翌日一日つぶして、私が薪にした。この樹は水っぽいのか、薪としては不適当のようである。風呂をたく時だけに使っているが、今まだ半分以上物置きに残存している。無花果の根株からは、近頃また新芽がふき始めてきたようだ。