Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
偶然に視線があったりすると、とたんに人をとがめるような眼付きになる。弱い動物が威嚇的に怒る、あの感じにも、それはどこか似ている。
ずっと前、カスミ網よりずっと前のこと、ある夕暮時、私の家の台所口の近くで、ガヤガヤという人の気配がした。話し声の抑揚からして、私の家とは関係なさそうであったけれども、とにかく台所まで出かけて行って、外をのぞいて見ると、三四人の男たちの影が、そこらにうじょうじょ立っていた。皆空の方を見上げている様子である。その中の一人がふと気がついたように、私の方をちらと見て、またあわてたように、顔を元の方にそむけた。そして強いて怒ったような、へんなつくり声を出して、こう言った。
「――枝、枝を切るって、枝はまた直ぐ伸びて、こすれ合わあな。元から切るんだな。根元からよ」
古畑大八郎の声である。皆の前には、私の家の大きな無花果の樹が、夕空に立って枝を拡げている。ここから下の方いったいの電燈を支配する電線が、その枝の中を通っていて、風が吹くたびに梢や枝とこすれ合い、そのために電燈がちらちらしたり、停電したりするというのである。なるほど見上げると、風が吹いて梢が動いていて、電線が二箇所ほど被覆が剥け、白っぽい地金のまま揺れているのが見える。