Japanische Klassiker mit Furigana
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『せっかずせつ』のけんきゅう
中谷宇吉郎集 第二巻
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 中谷宇吉郎集 第二巻 (『せっかずせつ』のけんきゅう) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.098 Zeichen · 172 Bildschirme
室鰺
伊豆の東海岸のこの温泉地では秋風の立ち始めるとともに、また室鰺が沢山漁れ出した。去年の秋の暮、少し静養の意味で、漁港と温泉とを兼ねたここの土地へ移ってきてからもう一年に近い。初めてきた時はちょうど室鰺の盛りの時期であった。通りに面して魚屋の店先には、小鰺と、室鰺との干物が一面に並べられて、秋の陽を一杯に受けながら行儀よく並んで乾されていた。それがいつの間にか段々少くなって行く中に春がきて、今また秋とともに室鰺の大群がここの海にかえってきたのを見ると、季節の移りかわりがよく感ぜられる。
誰の発意か分らないが、開いた鰺を一面に並べた網の枠は、少しばかり斜に立てかけられて、その上の方に煽風器が置いてある。そして煽風器の金網には五尺ばかりの色テープが結びつけられていて、煽風器が首をふるにつれて、その色テープが鰺の上を撫でながら蠅を追うような仕掛になっている。なるほどこうすれば乾燥も早いし、蠅の心配もないし、名案だと感心したらどこでも皆そうしていますと笑われた。しかし初めて考えた人は偉いと思った。
ここへきて新しい干物を喰べてみて、初めて干物というものは美味いものだと分った。