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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼしぞう

久生十蘭短篇選

久生 十蘭

Lesen Sie 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.344 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

欧洲引揚船の荷物検査はいつも無事にすんだためしがないが、こんどもまた子供の靴下からぞろりと宝石があらわれて五日も観音崎の沖でとめられ、ようやく上陸許可になったと思うと検疫中にチブス患者が出たり、なにかひどくごたごたした。

やすは白足袋の爪先をきっちり揃え、福々とした顔でなにかかんがえているふうだったが、

「伊作はけっして帰って来ないだろうと思って、ずっと前から覚悟していたのよ」

とだしぬけにそんなことをいいだした。

「へえ、どうして」

「どうしてってことはないけど、そんな気がしたの。だから、帰ってきたなんていったって、どうしてもほんとうのような気がしないのよ」

「帰るも帰らないもあるもんですか。否応なしよ。二十年近くも欧羅巴でしたい放題なことをして、四十二にもなって、追いかえされて来るなんて。あなた土耳古のアンカラへ赴任なすった千田公使、ごぞんじでしょう」

「まだ書記官でいらしたころ、ときどきお見えになったよ」

「ついこの間聞いたんですけど、千田さんはノスタルジーに耐えられなくなって……日本へ帰りたい帰りたいで神経衰弱におなりになって、ご夫婦でピストル自殺をなすったんですってよ」