Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.344 Zeichen · 96 Bildschirme
二
銀座の田丸屋よ。荷物が着くとどっさり入っているわ」
じぶんも食べながら移りかわる河岸の景色をながめていたが、薄靄の中にぼんやり聳えているエッフェル塔を見つけるとうれしそうに手を拍って、
「ちょいと、あれエッフェル塔でしょう……明治四十年の巴里の万国博覧会といって、よくあの写真を見せられたもんだった。おやおや懐しいこと」
他国で旧知にでも逢ったようにニコニコしていたが、パッシイの橋がすむと、
「ねえ、滋さん、あの上へのぼれるのかしら。エッフェル塔のてっぺんで初日の出を拝んだといったら話の種になるわね」
「ええ、のぼれるのよ。でもあそこが開くのは十時ですから、お日の出というわけにはいかないわ」
「ええ、ええ、それで結構よ」
やすが小走りに部屋へ入ってきて、滋子が坐っているのを見ると、
「なんだい滋さん、こんなところにいたの。もう時間よ、さあ出かけよう」
とせきたてた。
二
川崎をすぎると前窓にあたる風の音がだんだん強くなって来た。沖に白く波がしらが立ち、倉庫の屋根の上で群れ鳩が風に逆いながらぐるぐると輪をかいていた。海岸でさんざんに吹きまくられるのかと思うと、やはり服にすればよかったと、急に振りの赤さが気になってきた。