Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.344 Zeichen · 96 Bildschirme
杜松子は眼を見はって、
「母は三十日の午後に亡くなりました」
やすはなにげないふうでチラと滋子の顔を見ると、茶碗をかえし、両手を膝に置いてしずまりかえってしまった。
女中がまた電話をいいにきたので滋子が電話へ出てしばらくして帰ってくると、杜松子がいない。
「杜松子さんは」
「庭を見るって」
なるほど池の汀の萩の間でうらうらとした杜松子の後姿が見えていた。
滋子はそこへ坐りこむと、血の気をなくした顔になんともいいようのない薄笑いをうかべながら、
「あなたのおっしゃるとおりだったわ。ああ、ああ」
身体を支えるように右手を畳について、
「あなたはちゃんと見ぬいていらしたんですから驚きはなさらないでしょう。ね、驚かないでちょうだい。伊作は死んだわ。……ホテルからしらせてきたの。ひどいホテルらしいわ。もののいいかたなんか、まるで雲助なの……鞄の上へ腰をかけて、外套を着たまま、ピストルで頭を射って……ああ、ああ」
やすは顔をあおむけ、天井を見るような恰好でだまって聞いていたが、顔をうつむけたひょうしにキラリと光るものが一つ膝の上に落ちた。
「かあいそうに、かあいそうに……あたしはなにもかもみなわかっていたんだけど」