Japanische Klassiker mit Furigana
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ごかいのまど
五階の窓
国枝 史郎
Lesen Sie 五階の窓 (ごかいのまど) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.651 Zeichen · 16 Bildschirme
「ね、きみ、艶子はあの腰かけで人と待ち合わせているのだよ」
こう山本が囁いた。
「どうしてそんなことが分かるんだい?」
それが長谷川には不可解であった。
「艶子は診察券を買わなかったのだ」
「前に買って持っているのかもしれない」
「もし持っているなら受付へだね――うん、レントゲン科の受付へだ、少なくも出さなければならないはずだ。なるたけ早く出したほうが、早く治療をしてもらえるからさ」
「面会に来たんじゃあないかしら?」
「もし面会に来たのなら、すぐに病室へ行くはずだよ。ところが、艶子は病院へ入るとうろうろ廊下を歩いた末、あの腰かけへかけたのさ。それっきりちっとも動かないのだ。だれかにあの位置を指定され、それであそこへ行ったようにね」
「それはそうと、ぼくには不思議でならない。洋食屋のちらしを利用して、ぼくを引っかけたのはきみだろうが、どこにきみはいたのだい? ちっとも姿が見えなかったが」
「ああ、それか。なんでもないことだ。……おや!」
と、にわかに山本はびっくりしたように囁いた。
「見たまえ見たまえ、将校マントの男だ!」
かつてSビルディングのエレベーターから、ひょいと外へ飛び出した三十前後の下品な男が廊下の向こうからやって来た。