Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

「温霧谷の、速流氷河をどうして登るかという点で、僕はハタと詰ったんだ。普通の氷河なら、ザッと十マイルばかりを六十年もかかる。ところが、温霧谷の先生ときたら、化物以上だからね。猛速、強震動を発し、登行者を苦しめる。突然、数丈もある氷塔が頭上に落ちてくるだろう。また、なにもない足下に千仭の氷罅が空くだろう。なんていうのがザラだろうという訳も、すべてあの氷河の猛速の禍いだ。それに、氷擦のはげしさで、濃稠な蒸気が湧く。それが原因となる氷河疲労に、マア僕らは二時間とは堪えられまい」

「驚いた。あなたにも似ない、大変な弱音ですね」

と片隅のほうで嗤うような声がすると、

「そうとも、化物氷河と闘えるもんじゃない」

と、折竹が即座にやり返す。そしてその、温霧谷の速流氷河を十五マイルばかり登ったあたりに、大地軸孔がおそろしい口をひらいている。

作者はいま、便宜上「大地軸孔」などといっているが、その“KaraJilnagang”というのは中央アジア一帯の通称で、「黒い骨」というのが正確な意味になる。で今、もしもその辺りを絶好の月夜にながめたとしたら……。雪嶺銀渓、藍の影絵をつらねているワカン隘路のかなた、銀蛇とうねくる温霧谷氷河の一部が、ときどき翳るのはおそろしい雪崩か。