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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぐれがさ

人情武士道

山本 周五郎

Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

藤吉は手酌で酒を注いだ。

おかねが二階へ去ると、入れ違いに、二十七、八になる若者が入って来た。……色の褪めた紺縞木綿の袷に、やまのいった小倉の帯を緊めている。額の広い顎の張った逞しい顔だが、ひどく蒼白めていて、ひと口に云うと、極度の神経消耗を思わせるが、その眼だけは深く潜んだ鋭い意力を湛えていた。

名は宗七、今江戸で鯉の木彫の名人と呼ばれている男だ。……口重に挨拶をして、

「唯今はお使いでございましたが」

「ちょいと話があって来て貰った。手間を欠かして済まなかったな」

「いえなに、このところ暫くぶらぶらしているものですから」

「そうか遊んでるのか」

「遊んでるという訳でもありませんが」

「まあいいや、ひとつどうだ」

藤吉は盃を洗って差出した。

「有難うございますが、実は断っているもんですから……どうか」

「断っている? へええ、なにか願掛けか」

「なに……願というほどのことでもありませんが」

藤吉は黙って手酌で一杯呷った。

それから、手に盃を持ったまま何気ない様子で相手を見た。

「実あな宗七」

「…………」

「おらあ昨夜、石町の富田屋さんに呼ばれて行って来た。お嬢さんが来月御婚礼なさるそうで、その祝に使う鯉の置物をおめえにお頼みなすったそうだ」