Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme

Aozora Bunko

「ふん、つまらねえ」

弥市は首を振った。杢助が戦争などに出るわけはなかった、世間はせち辛いというが、どんなに世間がせち辛くとも、杢助はやはり怠け放題に怠けて、ごろごろ寝ころがったり、ぼんやりとなにかを眺めていたりしたにちがいない。世の中にはいつもそのくらいの余地はあるものだし、杢助のような人間はそれをみつけることができるに相違なかった。

「なあよ杢助、いってくろよ」

弥市は思いだしたように用件を云った。

「お登女さまがあんなに云ってるだに、黒門へゆけば安楽に暮せるだによ、どうかおめえ、いってくろよ杢助」

「あの大先生て人はなんて名めえだって」

「お登女さまは生涯不自由させねえって仰しゃってるだ、おめえはあの隠居所におさまって、好きな物を食って、暑さ寒さの心配もなくやってゆけるだよ、こんなにひっ傾がった穴だらけのぼろ家にいるのとは、お星さまと土竜よりえれえちげえだに、なあよ、おめえいってくろよ杢助」

「あの剣術の先生はなんていう名だって」

「お登女さまは大先生にゃ飽きちまっただ、向うから来ればお客にゃするだが、もうすっかり飽きちまってるだ、それに、初めっからそれほど気にいってござったじゃねえだよ」