Japanische Klassiker mit Furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme
肉の緊った骨の太い、ごつごつした躯つきで、武芸で鍛えた躯だということはひと眼でわかった。もちろん肥えてはいない、杢助と大差のないくらい痩せていて逞しくみえた。鼻も口も大きく、頬骨が出ていて、膚は渋紙色であった。どこかの意地の曲った親方が年をとりすぎて脱俗しかかっている、といったふうな顔つきにみえた。
「わしには見覚えのない顔であるが」
と老人がまた云った。
「そのほうは他国でもしていて、帰ってまいったのか」
「そうよ、おら帰って来ただ」
杢助は答えた。
「帰ってから五六日になるだよ」
「すると、五六日まえだとすると、その方くる眼の杢助という者ではないか」
老人は話しがしたそうであった。
「わしは黒門で聞いた、わしはときどき黒門へ客にまいるが、このたびまいって帰る前日に、その方の話しを聞いた、くる眼という稀有な癖のあることも、……その方がその杢助であろう」
杢助は両手で手拭をひろげて顔を洗った。湯が揺れて岩風呂の岩へぶっつかってはねた。そのしぶきが、岩から垂れている歯朶の葉に当って、その葉をゆらゆらさせた。
「そうだよ」
杢助は手拭の中で答えた。
「おめえさんの聞いたことに、嘘はねえだ、おらくる眼の杢助だあよ」