Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりとかぜとゆめ
光と風と夢
Lesen Sie 光と風と夢 (ひかりとかぜとゆめ) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.032 Zeichen · 158 Bildschirme
(足を組んだ膝頭の辺をがくがく顫わせながら。)服装はひどいが、顔立は鋭く知的である。目の赤く濁っているのは明らかに酒のせいだが、荒れた皮膚に脣だけいやに紅いのは少々気持が悪い。僅か一時間足らずの会話だったが、此の男が英国一流の大学を出ていることだけは確かに分った。こんな港町には珍しい・完全な英語である。雑貨行商人だといい、トンガから来たが、次の船でトケラウスへ渡るという。(彼は勿論、私が誰であるかを知りはしない。)商売のことは何もしゃべらない。島々に白人の移入した悪質の病気のことを少し話した。それから、自分には何もないこと。妻も、子も、家も、健康も、希望も。何が彼をこんな生活へ入らせたか、という私の愚問に就いては、何といって名指せるような、小説めいた原因なんかありませんよ。それに、こんな生活とおっしゃるが、今の生活だって、そう特殊なものでもないでしょう? 人間という形態をとって生れて来たという一層特殊な事情に比べればね、と笑いながら、軽い空咳をした。
之は抗い難きニヒリズムである。家に帰って寝に就いてからも、此の男の言葉の・極めて叮嚀な・しかし救いの無い調子が耳について仕方がない。