Japanische Klassiker mit Furigana
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
Lesen Sie 入江のほとり (いりえのほとり) von 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.430 Zeichen · 50 Bildschirme
……
「風が吹けば浪が騒ぎ、潮が満ちれば潟が隠れる。漁船は年々殖えて魚類は年々減りつつあり。川から泥が流れでて海はしだいに浅くなる。幾百年の後にはこの小さな海は干乾びて、魚の棲家には草が生えるであろう。……」こんな自作の文章を、辞書を繰っては、いちいち英字で埋めて行った。
以前二三度英語雑誌へ宿題を投書したことがあったが、一度も掲載されなかったので、今はまったくそんな望みを絶って、ただ自作の英文は絹糸で綴じた洋紙の帳簿に綺麗に書留めておくに止めている。自分ながら初めの方のに比べると、文章はしだいに巧みになっているような気がする。熟語などもおりおり使われるようになった。
階下が賑っているので、炬燵に当りに行くのを遠慮していたが、末の妹が息をせかせか吐きながら上ってきて、「栄さんのお土産」と言って、栗饅頭を二つ机の上に置いて行った。辰男はインキに汚れた骨太い指で抓んで大口に食べた。そして、冷くなっている手を内懐に入れて温めながらしばらく息休めをした。
妹と母とは、階下から夜具を運んで、次の室へ兄の寝床をのべた。と、間もなく栄一が上ってきたが、辰男の方をちょっと振返ったばかりで、次の室へ入って襖を締めた。