Japanische Klassiker mit Furigana
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わかれたるつまにおくるてがみ
別れたる妻に送る手紙
近松 秋江
Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme
そこらは私には何時までも忘れることの出来ぬ処だ。それから左の方に銀杏の樹が高く見える。それがつい四五日気の付かなかった間に黄色い葉が見違えるばかりにまばらに痩せている。私達はその下にも住んでいたことがあったのだ。
そんなことを思っては、私は方々、目的もなく歩き廻った。天気が好ければよくって戸外に出るし、雨が降れば降って家内にじっとしていられないで出て歩いた。破れた傘を翳して出歩いた。
そうしてお前と一緒に借りていた家は、古いのから古いのから見て廻った。けれども何の家の前に立って見たって、皆な知らぬ人が住んでいる。中には取払われて、以前の跡形もない家もあった。
でも九月中ぐらいは、若しかお前のいる気配はせぬかと雨が降っていれば、傘で姿が隠せるから、雨の降る日を待って、柳町の家の前を行ったり来たりして見た。
家内にいる時は、もう書籍なんか読む気にはなれない。大抵猫と遊んでいた。あの猫が面白い猫で、あれと追駈ッこをして見たり、樹に逐い登らして、それを竿でつゝいたり、弱った秋蝉を捕ってやったり、ほうせん花の実って弾けるのを自分でも面白くって、むしって見たり、それを打つけて吃驚させて見たり、そんなことばかりしていた。