Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
そして、一押し、押されると、前へのめるように、足が、もつれて、動き出した。
「ちょっ、一人で歩くよ。放してくれ、危いったら――」
と、云った時、
「深雪」
と、いう声がした。老女、梅野の声であった。
(いけねえ、とんでもねえ奴に、見つかっちまった)
小藤次は、深雪の処置を心配するよりも、一度の睦言も交えずに、別れなくてはならなくなった自分の恋に、悲しい失望と、怒りとが起って来た。
「一寸、放してくれ」
侍は、黙って、ぐんぐん小藤次を押し立てた。小藤次は、つるし亀のように、手を振って、小走りに走らされながら
「一寸――頼む――後生だから――」
小藤次は、突き当りそうに近づく立木に、首をすくめたり、顔へ当りそうになる木の枝を、手で押しのけたり、庭の下草を踏んづけたり、石と石との間へ、躓いたりしながら、強い力に押されて、人形のように、もがきながら、半分、走らされていた。
「危いったら」
小藤次は、木の枝へ髷を引っかけて、怒り声を出した。侍は、片手で、枝を折った。小枝が、小藤次の髷へぶら下った。小藤次は、それを取ろうと、両手を頭へやりながら
「ねえ、後生だから――」
と、いった時、柴折戸の辺へ来たらしく、ほのかに、明りが射してきた。