Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

三太が呼びかけても返事もしない。

三太は黙って、爺さんと並んで石段に腰をかけ、そのしなびた顔を覗きこんだ。すると、爺さんはさも煩さそうに、そっぽをむいて、独り言のようにすねた声をだした。

「家鴨はお浜ですげな」

「お浜てなんかな」

「色気ちがいですがな」

「色気ちがいてなんかな」

今までの寂寥もけろりと忘れたように、爺さんは歯のない歯ぐきをまるだしの笑顔になっている。

「色気ちがいというのは、男と見れば誰にでも吸いつく女ですがな」

お浜は齢の頃三十ばかりで、千両坂の坂下に独り住いをしている。五年ばかり前、お浜は女役者あがりの姉さんと、姉さんの子供であるてんかん持ちの少年と、三人連れでこの村に姿を現わした。初めお浜たちは豆腐屋の二階を間借りして住んでいたが、村の人たちは誰も彼女一家とつきあおうとはしなかった。「他郷者」で気心が知れないからであるが、その上、てんかん持ちの少年が、時どき、道路といわず、畑といわず、口から泡を吹いて、土の上にぶっ倒れるのも、薄気味がわるかったのである。

しかし、姉さんは一年もたたないうちに、若い行商人と子供連れで駈け落ちしてしまった。