Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わせいつばきひめ

和製椿姫

大倉 燁子

Lesen Sie 和製椿姫 (わせいつばきひめ) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.221 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

3

僕も一役をかっているんですが――」と真面目臭って云った。

浮世離れたこの一室は美耶子のあこがれの世界なのであろうか。彼女ばかりでなく、青年まで、いや侍女までが何となく精神病者でもあるような気がする、そこの空気全体が狂っているような感じで、私までいつかだんだんと引き込まれそうな気がしたので、いそいで部屋を飛び出してしまった。

3

応接室に戻ってほっとしていると、後を追って来た青年は私と差向いの椅子に腰かけて、静かに語り出した。

「話は二十年前に溯らなければなりません。みよりというもののない美耶子は生きるために夜の女になったのです。それよりほかに道がなかった。毎夜往来に出て客を拾うのですが、ある雪の降る寒い晩、生憎と一人の客も掴まらない、恰度その頃彼女は誰の子とも分らない嬰児を生んだばかりで、勿論嬰児はそのまま産院に預けてしまったが、彼女はその夜一文の収入もないのと、無暗と乳の張るのとに苦しまなければならなかったのです。

夜は段々に更けて来る。雪はますます降りしきる。もう商売も駄目だと見きりをつけて、帰ろうとする時、ふと行手の往来に人影を認めました。背の低い、一寸法師かと思われるような男がマントを着てとぼとぼと歩いて行くのです。