Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
「解散や、潔く解散しよ」
翌日、刀折れ矢尽きたように海老団治が言い出した。少うし顔が青ばんでいて、額に冷汗に似た汗が滲んでいた。米子のそばの皆生というわびしい温泉場の、今にもひと雨降ってきそうな松林を背にした貧弱な寄席の桟敷。昨夜、十人そこそこのお客の帰っていったあと、皆はこの客席へと寝たのだった。無気味に、夕暮れ近い浪音が聞こえてきていた。
「よかろう、これ以上深間へ入ってってもしようがないもの」
素直に今松はうなずいた。
いやな奴ばかりいるけれどしかたがない。
また大阪の寄席へ帰って働かせてもらおう。
「ときに、浮はんは」
海老団治は浮世丸のほうを見た。
「いや、わしかて解散賛成ですわ。わしはここまできたついでに、大山の麓にある従兄のところへ行ってみましょう」
見えない大きな目をパチパチさせて浮世丸は、ガラス瓶のなかにほんの二分ばかり残っている焼酎を欠け茶碗へ酌いで美味そうにチビチビやりながら、未練なく答えた。ヤマの入った帯の間に、もうあの大きな懐中時計は見えなかった。
「ア、さよか。それやったらええが」
安心したように言って海老団治は、おしまいに見るから爺むさい麦松の上へ、目を落した。