Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
あのお艶ちゃんという人を、生涯、自分は二度ともう思い出さないですむ。
そのことだけでもスッパリとあきらめがついていいだろう。
逢うことだ。
そうだ、逢うことだ。
ハッキリ思い定めたとき、はしなくもお艶の噂が小助六の耳へ伝わってきた、しかもまったく意外な噂が。
例の三河屋の隠居のところは、どうしてもあのとき心が進まず、キッパリ断ってしまったけれど、さてそうなると重病の母をかかえて先立つものは、やはりお金。
お艶は、旅芸者に身を売ってしまった。
宝珠花から関宿栗橋のほうへ。
二年の月日を流れてきた。
それほどの苦労の甲斐もなく、やっぱり阿母さんは死んでしまった。
ガッカリして年期を終えて帰ってきた東京の寄席の看板には、あの今松の名は見出されなかった。
しかも。風のたよりに聞けば、あの人、やっぱり私ゆえに身を持ち崩して悪いお酒を飲み、遠い旅路をさすらっているとか。
母の死と今松の失踪と。
この二つの出来事に、もう意地も張りもなくなってしまったお艶は再び寄席の高座へ返り咲こう気力もなく、今ではどこか馬道辺へ二階借りして破れ三味線一挺かかえ、人の軒端に立っている――とか。