Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
苦々しげに顔見合わせる柳条、柳橋を尻目にかけて、圓朝はややしばらくその辺を泳ぎ廻り、もうよい時分とぐしょぐしょに濡れそぼけた縮緬浴衣のまんま、自分の船へ泳ぎつくと、
「おい、早く、そっちの浴衣を出してくんねえ」
舟べりでどうなることかとハラハラしていた美しい横顔へ呼びかけた。
「あい、あい。お前さんあの、これで」
スーッと立ち上がったお絲は濡れた浴衣をぬがせると、すぐに用意してあったもうひとつの寸分違わぬ首ぬき浴衣を、まだ体中水だらけの圓朝へと、ふんわり背中からかけてやった。
「剛気だな、オイ、圓朝って、あの素晴らしい縮緬浴衣、何枚持ってきてやがるんだろう」
「まったくだ、若えがど偉え度胸っ骨だぜ。たのむぞ圓朝ーっ」
またしても八方の船から見物たちは、霰のような拍手を浴びせた。もう柳条も柳橋もなかった。いや、さしもの大御所柳枝さえが、すでにすでに若い圓朝の前に、完全にその色を失っていた。今こそ圓朝は、江戸八百八町の人気という人気を根こそぎひとりでひっさらって仁王立ちしている自分を感じた。
ああ、この夜のこと、とわに忘れまじ。
お絲よ、花火よ。
いつか不機嫌のカラリと晴れて、圓朝は心にこう叫ぶものがあった。