Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
「加賀さまのほうで花火を上げているそうでござんすよ」
車夫の音松はそう言ったが、俥の上で振り返って見てもそれらしい光は見えず、雨もよいの風はひいやりと涼しく、夜空がいたずらに赤茶けていた。
――これから招ばれて行く馬越様とは、実業界にときめく馬越恭平が芝桜川の邸宅では、今夜川田小一郎、渋沢栄一などときの紳商に圓朝をまじえた人たちが、夜を徹して風流韻事を語り明かそうという。いつか、日本の芸界で市川團十郎、尾上菊五郎、常磐津林中などとともに第一流の人物に仲間入りをしていた彼、圓朝だった。たまたま、いま花火のひと言から、軌みゆく人力車上に、つくづくと彼は「時の流れ」ということを考えてみないわけにはゆかなかった。
と――思いもかけず、吹貫亭の四畳半へ置いてけぼりにしてきた勅使河原静江の黒目がちの眼差が、幻燈の画面のように眼先へちらついてきた。それがお絲の顔に変わった。飽きも飽かれもせぬものを、生木を割かれて別れたお絲の。
「お絲と別れて自棄になった時分の圓朝なら、あの脂の乗りきった出戻りのお嬢さまに、名僧知識そこのけのお説教を聞かすような、もったいねえ真似はしなかったはずだ。