Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
その晩佐竹の富本という寄席の楽屋へ入っていった今松は、如才なく楽屋の誰彼に挨拶しながらも、いつもお艶の座っている高座の脇へだけ、目をやることができなかった。
神様。
どうかお艶ちゃんを三河屋の爺さんのお神さんにさせないでください。
心のうちで今松は、拝んだ。
ほんとにほんとに、お願いです。
やっとの思いで目を開けてみると、顔に大きなヒッツリのある下座のおきん婆さんがトボンと座っているばかりで、恋しいひとの姿はやっぱりその場所には見られなかった。
牡丹色のお艶の座蒲団が、空しく敷きっ放しにされていた。
ひと目見て、床の間の花活に花のなかった寂しさを、感じないわけにはゆかなかった。
大事な大事な宝石を、千仞の谷底へ落してしまったつまらなさでもあった。
暗く、悲しく、ガッカリとした。
お高祖頭巾のなかのやさしい目が、さし込んでくる百目蝋燭の灯影にちらついてきてならなかった。
「今松、ここは今朝にちょいと代わらせておく。大急ぎで茶屋町まで行って、都々逸坊にこの手紙届けてきてくれ」
そのとき相変わらずの真っ赤な顔をした師匠の助六が右手に厚い封筒をつかんで、せっかちに入ってきた。