Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
嵐は、お艶の吐息だった。溜息だった。
な、なんだ、男一匹が。女々しいにも程がある、たかが女一人のいきさつで。
そう自分を叱りつけてみたけれど、「心」は、それに「否」と答えた。
ちがうちがう、女々しいんじゃないんだ、俺は。
お艶にふられてメソメソしているこの俺なら、東京っ子の面汚しともいえよう。
露助に見られて恥ともいえよう。
が――そうじゃない。
三河屋の七十隠居へもらわれていく、そんな暗い悲しい惨ましいお艶ちゃんとの別れだから、俺の心は痛み、疼くのだ。
どうしてそれが女々しいといえよう。
「検校の妾に顔を棄てに行き」オットセイの左楽師匠は、昨夜、お成道の日本亭の高座でこんな川柳をマクラに振ってたっけが、それにも等しいお艶ちゃんの身の上なればこそ、俺は悲しみ嘆いているのだ。
強いばかりが武士ではあるまい。
花も実もある男こそ、初めて露助に見せつけて威張ってやれるほんとうの日本男児だろう。
だとすると、だとすると、せめて俺は男として、かわいそうなお艶ちゃんの身の上のために泣けるだけ泣いてやったって――。
いいのだ。いいにちがいないのだ。心にこう思い定めたとき、不覚にもまたポロポロと大粒の涙が溢れ、生ぬるく頬へ流れてきた。