Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
彼はいろんな品物に丁寧に綱をかけ、覆いや枠を拵えた。そんな作業の合間には、事務室に戻り、チェック・プロテクターを使ったり、来客と応対した。夜は妹を相手にひとりで晩酌をした。酒はどこかから這入って来たし、順一の機嫌はよかった……
と、ある朝、B29がこの街の上空を掠めて行った。森製作所の縫工場にいた学徒たちは、一斉に窓からのぞき、屋根の方へ匐い出し、空に残る飛行機雲をみとれた。「綺麗だわね」「おお速いこと」と、少女たちはてんでに嘆声を放つ。B29も、飛行機雲も、この街に姿を現したのはこれがはじめてであった。――昨年来、東京で見なれていた正三には久し振りに見る飛行機雲であった。
その翌日、馬車が来て、高子の荷は五日市町の方へ運ばれて行った。「嫁入りのやりなおしですよ」と、高子は笑いながら、近所の人々に挨拶して出発した。だが、四五日すると、高子は改めて近所との送別会に戻って来た。電気休業で、朝から台所には餅臼が用意されて、順一や康子は餅搗の支度をした。そのうちに隣組の女達がぞろぞろと台所にやって来た。……今では正三も妹の口から、この近隣の人々のことも、うんざりするほどきかされていた。