Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.629 Zeichen · 408 Bildschirme
の二階でいろいろと荷物を片づけにかかった。
半蔵が部屋の廊下に出て見たころは夕方に近い。
「半蔵さん、きょうはひとりで町へ買い物に出て、それはよい娘を見て来ましたぜ。」
と言って寿平次は国への江戸土産にするものなぞを手にさげながら帰って来た。
「君にはかなわない。すぐにそういうところへ目がつくんだから。」
半蔵はそれを言いかけて、思わず顔を染めた。二人は宿屋の二階の欄に身を倚せて、目につく風俗なぞを話し合いながら、しばらくそこに旅らしい時を送った。髪を結綿というものにして、紅い鹿の子の帯なぞをしめた若いさかりの娘の洗練された風俗も、こうした都会でなければ見られないものだ。国の方で素枯れた葱なぞを吹いている年ごろの女が、ここでは酸漿を鳴らしている。渋い柿色の「けいし」を小脇にかかえながら、唄のけいこにでも通うらしい小娘のあどけなさ。黒繻子の襟のかかった着物を着て水茶屋の暖簾のかげに物思わしげな女のなまめかしさ。極度に爛熟した江戸趣味は、もはや行くところまで行き尽くしたかとも思わせる。
やがて半蔵は佐吉を呼んだ。翌朝出かけられるばかりに旅の荷物をまとめさせた。