Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.629 Zeichen · 408 Bildschirme
万屋安兵衛が手代の嘉吉を連れて、美濃の方を立って来たのは同じ月の下旬である。二人はやはり以前と同じ道筋を取って、江戸両国の十一屋泊まりで、旧暦四月にはいってから神奈川の牡丹屋に着いた。
にわかに寛斎のまわりもにぎやかになった。旅の落し差を床の間に預ける安兵衛もいる。部屋の片すみに脚絆の紐を解く嘉吉もいる。二人は寛斎の聞きたいと思う郷里の方の人たちの消息――彼の妻子の消息、彼の知人の消息、彼の旧い弟子たちの消息ばかりでなく、何かこう一口には言ってしまえないが、あの東美濃の盆地の方の空気までもなんとなく一緒に寛斎のところへ持って来た。
寛斎がたったりすわったりしているそばで、嘉吉は働き盛りの手代らしい調子で、
「宮川先生も、ずいぶんお待ちになったでしょう。なにしろ春蚕の済まないうちは、どうすることもできませんでした。糸はでそろいませんし。」
と言うと、安兵衛も寛斎をねぎらい顔に、
「いや、よく御辛抱が続きましたよ。こんなに長くなるんでしたら、一度国の方へお帰りを願って、また出て来ていただいてもとは思いましたがね。」
百里の道を往復して生糸商売でもしようという安兵衛には、さすがに思いやりがある。