Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
私はそれからその廃寺の八重葎の茂った境内にはいって往って、みるかげもなく荒れ果てた小さな西金堂(これも天平の遺構だそうだ……)の中を、はずれかかった櫺子ごしにのぞいて、そこの天平好みの化粧天井裏を見上げたり、半ば剥落した白壁の上に描きちらされてある村の子供のらしい楽書を一つ一つ見たり、しまいには裏の扉口からそっと堂内に忍びこんで、磚のすき間から生えている葎までも何か大事そうに踏まえて、こんどは反対に櫺子の中から明るい土のうえにくっきりと印せられている松の木の影に見入ったりしながら、そう、――もうかれこれ小一時間ばかり、此処でこうやって過ごしている。女の来るのを待ちあぐねている古の貴公子のようにわれとわが身を描いたりしながら。……
夕方、奈良への帰途
海竜王寺を出ると、村で大きな柿を二つほど買って、それを皮ごと噛りながら、こんどは佐紀山らしい林のある方に向って歩き出した。「どうもまだまだ駄目だ。それに、どうしてこうおれは中世的に出来上がっているのだろう。いくら天平好みの寺だといったって、こんな小っちゃな寺の、しかもその廃頽した気分に、こんなにうつつを抜かしていたのでは。