Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
橇の上にて
旅すがたを、何んだかそれがずっと昔の日の自分たちのことででもあるかのような、妙ななつかしさでもって、鮮やかに、蘇らせ出していた。
橇の上にて
そこの小屋のなかで待っていてくれと云われるまま、しばらく五六人の馭者らしい人たちの間に割りこんで、手もちぶさたそうに炉の火にあたっていたが、みんなの吹かしている煙草にむせて急に咳が出だしたので、僕は小屋のそとに出ていって、これから自分のはいってゆこうとする志賀山の案内図をながめたり、小さな雪がちらちらとふっているなかを何んとなく歩いてみたりしていた。雪の質は乾いてさらさらとしているし、風もないので、零下何度だか知らないけれど、寒さはそうひどく感ぜられなかった。そのうちに、向うの厩の中から、さいぜんの若い馭者が馬の口をとりながら、一台の雪橇を曳き出して来るのが見えた。僕は雪橇というものをはじめて見た。――粗末な箱型をしたものに、幌とはほんの名ばかりの、継ぎはぎだらけの鼠いろの布を被っただけのものである。馭者台なんぞもない。それもそのはず、馭者は馬のさきに立って雪のなかを歩いてゆくのである。
その橇が自分の前に横づけになったものの、どこから乗っていいのか分からないでまごまごしていると、馭者が飛んできて、幌をもちあげながら入口をあけてくれた。