Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまとじ・しなのじ

大和路・信濃路

堀 辰雄

Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

十月

一

あれは一体、何んの樹だったのだろうか?……そんなことをおもいながら、私はふと樹下思惟という言葉を、その言葉のもつ云いしれずなつかしい心像を、身にひしひしと感じた。あれは一体、何んの樹? ……だが、あの大きな樹の下で、ひとり静かに思惟にふけっていたもの――それはあの笹むらのなかに小さな頭を傾げていた石仏だったろうか? それとも、それに見入りながらその怪しげな思惟像をとおしてはるか彼方のものに心を惹かれていた私のほうではなかったろうか?

それにしても、あそこには、――あの何やらメエルヘンめいた石仏の前には、いまだにあの愚かな村びとどもの香花が絶えないだろうか? 子供たちがそこいらの路傍から摘んでくるかわいらしい草花だけならいいが……

十月

一

一九四一年十月十日、奈良ホテルにて

くれがた奈良に著いた。僕のためにとっておいてくれたのは、かなり奥まった部屋で、なかなか落ちつけそうな部屋で好い。すこうし仕事をするのには僕には大きすぎるかなと、もうここで仕事に没頭している最中のような気もちになって部屋の中を歩きまわってみたが、なかなか歩きでがある。これもこれでよかろうという事にして、こんどは窓に近づき、それをあけてみようとして窓掛けに手をかけたが、つい面倒になって、まあそれくらいはあすの朝の楽しみにしておいてやれとおもっ