Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
なんというういういしい、しかも切ない目ざしだろう。こういう目ざしをして、何を見つめよとわれわれに示しているのだろう。
それが何かわれわれ人間の奥ぶかくにあるもので、その一心な目ざしに自分を集中させていると、自分のうちにおのずから故しれぬ郷愁のようなものが生れてくる、――何かそういったノスタルジックなものさえ身におぼえ出しながら、僕はだんだん切ない気もちになって、やっとのことで、その彫像をうしろにした。それから中央の虚空蔵菩薩を遠くから見上げ、何かこらえるように、黙ってその前を素通りした。
夜、寝床の上で
とうとう一日中、薄曇っていた。午後もまたホテルに閉じこもり、仕事にもまだ手のつかないまま、結局、ソフォクレェスの悲劇を再びとりあげて、ずっと読んでしまった。
この悲劇の主人公たちはその最後の日まで何んという苦患に充ちた一生を送らなければならないのだろう。しかも、そういう人間の苦患の上には、なんの変ることもなく、ギリシアの空はほがらかに拡がっている。その神さびた森はすべてのものを吸い込んでしまうような底知れぬ静かさだ。あたかもそれが人間の悲痛な呼びかけに対する神々の答えででもあるかのように。