Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
ただその形相そのものに対する素朴な愛好からそういうものを生んだのだ。そうしてその故に、――そこにまだわずかにせよ残っているかも知れない原初の崇高な形相にまで、私のようなものの心をあくがれしめるのであろうか? こんないかにもなにげない像ですら。……
「ときどきお花やお線香などが上がっているようですが、村の人たちはあの像にも何か特別な信仰をもっているのですか?」
最後に私はそんなこともきいてみた。
「さあ、それもいつごろからの事だか知りませんけれど、わりに近頃になってからだそうですが、歯を病む子をつれて、村の年よりどもがよく拝みに来ます。」そういってその住職は笑った。
「あの指先で頬を支えている思惟の相が、村びとにはなんのことやら分からなくって、いつかそんな俗信を生むようになったと見えますな。」
「それはいくら何んでも……」そう言いかけたが、しかしそのまま私は口をつぐんで、これから秋になって、夜ごとに虫がすだいて啼きはじめるあの笹むらのなかで、相変らず、じいっと小さな頭を傾げているだろうその無心そうな像を、ふいと目のうちに蘇らせた。いつのまにこの像がこんなに自分にとって親しみのあるものになってしまったのだろうと訝りながら。