Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
いま細部の工夫などを愉しんでやっている。日暮れごろ、また高畑のほうへ往って、ついじの崩れのあるあたりを歩いてきた。尾花が一めんに咲きみだれ、もう葉の黄ばみだした柿の木の間から、夕月がちらりと見えたり、三笠山の落ちついた姿が渋い色をして見えたりするのが、何んともいえずに好い。晩秋から初冬へかけての、大和路はさぞいいだろうなあと、つい小説のほうから心を外らして、そんな事を考え出しているうちに、僕は突然或る決心をした。――僕はやはり二三日うちに、荷物はこのまま預けておいて、ホテルを引き上げよう。しかし、いかるがの宿に籠もるのではない。東京へ帰る。そうしておまえの傍で、心しずかにこの仕事に向い、それを書き上げてから、もう一度、十一月のなかば過ぎにこちらに来ようというのだ。そうして大和路のどこかで、秋が過ぎて、冬の来るのを見まもっていたい。都合がついたら、おまえも一しょにつれて来よう、どうもいまこうして奈良にいると、一日じゅう仕事に没頭しているのが何んだかもったいなくなって、つい何処かへ出かけてみたくなる。何処へいっても、すぐもうそこには自分の心を豊かにするものがあるのだからなあ。