Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
が、畝傍山のふもとまで来たら、急に日がさしてきて、きのうのように気もちのいい冬日和になりました。三年まえの五月、ちょうど桐の花の咲いていたころ、君といっしょにこのあたりを二日つづけて歩きまわった折のことを思い出しながら、大体そのときと同じ村々をこんどは一人きりで、さも自分のよく知っている村かなんぞのような気やすさで、歩きまわって来ました。が、帰りみち、途中で日がとっぷりと昏れ、五条野あたりで道に迷ったりして、やっと月あかりのなかを岡寺の駅にたどりつきました……
あすは朝はやく奈良を立って、一気に倉敷を目ざして往くつもりです。よほど決心をしてかからないことには、このままこちらでぶらぶらしてしまいそうです。見たいものはそれは一ぱいあるのですから。だが、こんどはどうあっても僕はエル・グレコの絵を見て来なければなりません。なぜ、そんなに見て来なければならないような気もちになってしまったのか、自分でもよく分かりません。僕のうちの何物かがそれを僕に強く命ずるのです。それにどういうものか、こんどそれを見損ったら、一生見られないでしまうような焦躁のようなものさえ感ぜられるのです。