Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまとじ・しなのじ

大和路・信濃路

堀 辰雄

Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

もういいからとことわっても、一しょに小屋を出た。ボブもあとからくっついてきた。夜の空気は稀薄で、痛いように冷え切っていた。僕たちはあすは何処かもっと山の方――菅平か、野辺山あたりまで出かけ、妻がこちらに来る頃にまた戻ってくることを約束して林のはずれで別れた。

僕たちはそれから沈黙がちに、枯木の下を抜け抜け、僕たちの靴に踏まれて凍った土の割れる音を耳にしながら、歩いていった。するともう一つ、ときどき何処かから、それとはちがった、硬い、金属的な幽かな音が聞えて来た。

「あれは何んの音でしょう?」M君がいぶかしそうに訊いた。

「ああ、あれかい。あれは、君、枯枝と枯枝とが風でぶつかる音だよ。――ほら、ああやってちょっとぶつかるだけでも、ずいぶん鋭い音を立てるだろう。空気がぱりぱりになっているのだね。……」

そう言いながら、一しょに頭上の梢をみあげていると、絶えずかすかに揺れている枯枝の網を透いて、一めんの星空だった。そうしてその星のひとつひとつが東京なんぞの空で見えるよりかずっと大きく見えた。

突然、右手の空家の庭の一隅で、がさがさと溜った落葉がひっかきまわされるような音がきこえた。