Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
来ているのだからと、春日の森のなかを馬酔木の咲いているほうへほうへと歩いて往ってみた。夕じめりのした森のなかには、その花のかすかな香りがどことなく漂って、ふいにそれを嗅いだりすると、なんだか身のしまるような気のするほどだった。だが、もうすっかり疲れ切っていた僕たちはそれにもだんだん刺戟が感ぜられないようになりだしていた。そうして、こんな夕がた、その白い花のさいた間をなんということもなしにこうして歩いて見るのをこんどの旅の愉しみにして来たことさえ、すこしももう考えようともしなくなっているほど、――少くとも、僕の心は疲れた身体とともにぼおっとしてしまっていた。
突然、妻がいった。
「なんだか、ここの馬酔木と、浄瑠璃寺にあったのとは、すこしちがうんじゃない? ここのは、こんなに真っ白だけれど、あそこのはもっと房が大きくて、うっすらと紅味を帯びていたわ。……」
「そうかなあ。僕にはおんなじにしか見えないが……」僕はすこし面倒くさそうに、妻が手ぐりよせているその一枝へ目をやっていたが、「そういえば、すこうし……」
そう言いかけながら、僕はそのときふいと、ひどく疲れて何もかもが妙にぼおっとしている心のうちに、きょうの昼つかた、浄瑠璃寺の小さな門のそばでしばらく妻と二人でその白い小さな花を手にとりあって見ていた自分たちの