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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.235 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「あッ」

それは実に驚くべき一瞬でした。狂気した海蔵寺伯爵の手には、鋭い短剣が握られて、葉子の上へ一陣の黒い風のようにサッと襲いかかったのです。

葉子の胸は傷きました。血はイヴニング・ドレスの襟をひたして、葉子の身体は長椅子の上へドッと仰向いたのです。それを追って伯爵の短剣が――

気狂い染みた眼が、ほんの暫く、恐怖に顫える葉子の美しさを享楽しなかったら、葉子は間違いもなく、その心臓を刺されたことでしょう。

ニタニタと笑った伯爵の顔は、葉子の蒼白い顔の上にのしかかって、短剣はその心臓の上に擬せられました。

この時、窓の硝子を外から叩き割って、掛金を外すと、風の如く飛込んだ者があります。――詩人江守銀二です。

「なんということをするのだ」

伯爵を突きのめすと、その短剣を奪い取りました。幸い美食に肥った伯爵は、床の上に崩折れて、暫くは起き上る力もありません。

その間に江守銀二は傷ついた葉子を援け起しました。胸一ぱいに紅い牡丹を叩き付けたように、血潮は玉子色のイヴニング・ドレスを染めましたが、葉子は思いの外元気で、

「江守さん、有難うお蔭で――」

とその手に取りすがるのです。