Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.235 Zeichen · 22 Bildschirme
五
「私はなんにも存じませんが、おいしさと申すのは、やはり環境や空気や色彩やも勘定に入れた、趣味の総計の上に生れた、食物のよさだと存じます。フランスの一流のディナーや、日本のお茶の会席などは、そのよい例ではないでしょうか。よい趣味とよい器物とで頂かなければ、どんなに材料が上等でも、本当のおいしさは無いことと存じます」
松尾葉子はこれだけ言うのが精一杯でした。
続いてこの私――戸田樹一が起ちましたが、私の意見などはここで申上げるほどの大したものではありません。
五
最後に主人公の伯爵海蔵寺三郎が起ちました。蒼白い顔も少し三鞭に色づいて、高雅な悠揚たる態度も、いくらか活気を帯びて居ります。
「私の食道楽生活も、実に二十年の歴史を経ました。学生時代に日本橋に魚河岸のあった頃、あの屋台店の鮨の立食いに始まって、東京中のうまい物を片っ端から荒し廻ったのです。時は明治の末、江戸の名残は街裏、路地の奥に残って、飛んだうまい物が、私共若い者の舌を喜ばせてくれたのです。その頃、天プラは橋喜、天金、鰻は神田川、竹葉、大黒屋、蕎麦は団子坂の藪に麻布の更科に池の端の蓮玉庵、といった頃で、親がかりで小遣に不自由の無い私は、毎日毎日うまいもの屋を漁り、大学へ行く頃はもう、うまい物横町の中華とか、山谷の八百善とか、新橋の花月とか、百尺、一直