Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.235 Zeichen · 22 Bildschirme
その上海蔵寺三郎は、外国を二三度廻って、一流ホテルの絶対に臭気の無い、磨き抜いたような便所にも入り、給仕にチップをやる骨も心得、テーブル・スピーチなども、極めて要領よく当らず触らずにこなす呼吸も呑込んで居りました。
従って同族間にも、娘をやりたいとか、是非妹を――という口も少なくなかったのですが、どうしたことか海蔵寺三郎は、そんな世間並の縁談には耳もかさず、唯もう謹直無事な日を送って、華族社会の悪党共――当時青竹の手摺と言われた人種を口惜しがらせて居りました。
と申すと、典型的な青年伯爵の生活が一体何が面白いかと仰しゃる方があるかも知れません。が実は、海蔵寺三郎には、人に秘めたる、ひそやかな楽しみがあったのです。それは、世間並の若様のお道楽の、ゴルフやダンスや、映画や素人写真ではなく、なんと海蔵寺三郎伯爵は、自分で料理して、自分で御馳走を食うという、世にも徹底した美食主義者で、それが何よりの楽しみで、そして哲学で宗教で、海蔵寺三郎の生き方だったのです。
「君子は庖厨に近づかず――」という言葉があります。私などもその帰依者で、お勝手へ闖入して、女房に煮物の味付けの小言をいうなどは、士君子の恥ずべきことだと信じて居りますが、海蔵寺三郎は身伯爵の栄位にありながら、浅ましくもお勝手に出張して、刺身庖丁の手さばき